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人生には希望がある
偏屈、頑固者といったイメージが妙に拡大されてしまっているチェリだが、これを見るといかに彼が後進の若者を育てることに心血を注いでいたかがよくわかる。烈火のごとく怒り辛辣な皮肉を飛ばすかと思えば、破顔一笑、手放しで賞賛。途方もないコントラスト。まるでチェリの音楽そのもの。 講義やリハで発する一言一言が実に重く含蓄に富んでいる。フッサール現象学の講義を聴いているようだ。音楽を糧として生きていく者なら一見の価値はあるどころか必見である。それにしても実演聴きたかった。許さんや鈴木さんがうらやましいです。 しかし入手困難なのは分かるが、VHS版が途方もない価格で出品されてますな。DVDの再発を強く希望します。
ドキュメンタリーとしての出来と、対象の価値と
息子のセルジュ・イオアンが撮影し、膨大なフィルムの中から選び抜いて作ったのがこの作品。この偏屈な巨匠のドキュメンタリーとしては他にもJan Schmidt-Garreによるものがあります。後者がナレーションにより構成された割と手堅いドキュメンタリーとしての骨格をもっているのに比べると、こちらの方がより難解という印象です。ただし、撮影しているのが愛息ということもあり、他の映像にはみられないリラックスした瞬間があるのも事実。見られるだけで価値がある、と言ってしまうと作り手には失礼かもしれませんが。
それでもCDをききたい
チェリビダッケはこの映画の中で、指揮者の役割、音楽のクライマックスについて、あるべきテンポについて、など、音楽のエッセンスについて語っている。また、時折差し込まれているリハーサル風景のなかでその実践についてうかがい知ることが出来る。音楽のビジネス化やメディアによるクラシック音楽の
大衆化などに無縁だっただろう彼の信念の声だ。

彼はその中で『録音は音楽の墓場だ』と言っている。しかし、それでも彼のCDを買って聞きたい。いまでは彼の生演奏など望めないのだから。
クラシック音楽を一段掘り下げて聞いてみたい方には必見。